《後編》これが、ALsのしているファシリテーターのお仕事です。
これまで、
《前編》http://rin-suginami.hateblo.jp/entry/2019/02/14/061448
《中編》http://rin-suginami.hateblo.jp/entry/2019/02/12/081042
…と書かせていただきました。
最後は、当日の進行から報酬のシステムまで。
Step5 当日の場を進行する
毎回、緊張します。
緊張してなさそう…と言われることが多いのですが、緊張しています。
いつまで経っても、人前に立つことは慣れません。
もう、「人前に立ったら、緊張するもんだ」と思い込むようにし、緊張しているけれど精神状態は安定させるすべを身に付けつつあります。
定刻になり、会が始まると、事前に準備していたスライドとイメージをベースに進行していきます。
スライドをつくっているときもそうですが、何を言うかよりも、何を言わないか・どれだけ聴く側にとって情報量を減らせるかを意識しています。
噛んだり、つっかえたりせずに喋れるかどうかは、僕の場合は、事前の練習量よりも、この会に対する理解や納得感と、頭が動く日かどうか(日によって結構違う!!)によることが、最近分かってきました。
ちなみに、この「進行」に割いている自分の力は、実はおおよそ2~3割ぐらい。
残りの7割強を何に使っているかというと…
観たり、聴いたり、とにかく場を観察すること。話し合われている内容もそうですが、それ以上に”様子”を観察しています。
そこで、困ったり不安そうな表情、もやもや感が見え隠れする声色、不穏な沈黙など、そこに参加している人達にとってあまり気持ちよくなさそうな状況や、逆にとっても気持ち良さそうな状況を見つけては、なぜこうなっているんだろうと、分析すること。
そして、その状況に対して自分が何をするか・何をしないかを検討し、必要だと判断したときには介入すること。具体的には、個人やグループに働きかけたり、プログラムを変更・追加・削除したり、場合によってはゴールを変更・全体に提案することも。
この、観察→分析→介入(する・しない)のサイクルを、頭の中で常に回し続けているイメージです。
これが、とっても難しいし、非常に疲れます。
ファシリテーターは、中立・第三者の立場から、参加者の主体性を引き出すようなプログラムデザインとゴールに向けた進行を行うのが役目。
この「主体性」を引き出すためにも、ファシリテーターは、話し合いの内容や決定には関わらず、なるべく介入もせずに、この場のありようを見守りたい。
会が終わる頃には、「あれ、いたの?」と思われるのが理想的。ただ、それが何もしない「放任・放置」と思われたら元も子もない。
そんな時、バランスをとってくれるのが、サブ・ファシリテーターの存在です。
ALsは、報酬額に関わらず、可能な限り2人で参加し、メイン・サブに分かれて進行しています。
サブは、進行業務にはほぼ関わらず、前に立つことはほぼありません。メインが中立の立場で進行している場を、さらに客観的な視点で捉えながら、ゴールの実現に向けて、場に何が必要かを思考し、メインの進行における判断の相談に乗ったり、あるいはアイディアを提供します。
中立性・第三者性を担保しながら場づくりを行うために、サブの役割は欠かせません。
何より、安心感がありますし、「そういう風に見えているのか!」という新たな発見や気づきも多いので、場づくりが面白くなるんですよね。
もちろん、費用面で考えたら、一人で行った方がコストはかからないのですが、それよりも場のクオリティや自分達の仕事に対しての面白さを優先し、なるべく2人で伺うようにしています。
Step6 報酬をいただく
主に、単発のお仕事である「講師謝礼」と、事業の企画から一緒に参画し、中・長期で関わっていく「事業委託」に分類されます。
講師謝礼の場合は、その場でいただけることもありますが、事業委託の場合は事業が全て終わってから支払われるので、例え4月から毎月の頻度で実施していたとしても、事業全体の終了が次の年の1月だったりすると、振り込まれるのは早くても2月だったりするので、結構きついときもあります。
金額ですが、講師謝礼の場合はだいたい3~6万円、事業委託の場合は数十万~数百万と、幅がとっても広いです。
一応、ALsとしても、報酬基準として「当日運営費 15,000円/1h + 企画費(事前打ち合わせ・プログラムデザイン・資料等作成・交通費等の2点を合わせた金額」というようにホームページにも記載させていただいているのですが、まずは「ファシリテーター」という仕事を根付かせることや、僕らが面白いと感じることには積極的に関わっていきたいということもあって、かなり融通を利かせているのが現状です。
そもそも「ファシリテーターという仕事にお金を払う」という仕組み?文化?が生まれてきたのが、ここ数年のこと。
見積書に「ファシリテーター業務」という風に記入して通るようになったときには、感動を覚えました。
仕事を生み出す、それを仕事として認識してもらう…というのは、本当に苦労するんだなぁと、意図せずこの世界に足を踏み入れてから実感しました。
すでに自分がやりたいと思う仕事が、世の中に認知されている・会社があるって、恵まれていることです笑
ただ、おかげさまで依頼件数は年々増えてきていること、単発だった依頼が複数回となり、ワークショップ型の場を通じて本気で何かをやろうという組織が増えてきた結果として報酬額が上がったこともあり、とりあえず社会保険に入りながらギリギリ2人でやっていけるくらいにはなりました。
本当に、ありがたいことです。
一方で、よねさんは大学で教えていたり、ぼくは別団体で活動していたり、パン屋で働いていたりなど、それぞれ、ALsとは違う場所でも活動しています。
これも、とっても必要なことだと思っていて。
1つの収入源にこだわらないことで、常にフラットな視点で僕らがALsで仕事をしている意味や目的に向き合えているし、プログラムデザインの幅や、人とのつながりも広がっていることを実感しています。
個人的には、ファシリテーターは、儲かる仕事ではないと思っています。
なんなら、ファシリテーターがいなくても、組織の中にファシリテーション(スキル)を用いる人が何人かいれば、場はうまく回ると思いますし、なんならそういう世の中を目指していこうと、新たな事業を検討している最中です。
ただ、仕事をするときに出会える依頼主は「今の場をどうにかしたい!もっとよくできる!」という熱い想いや信念をもった方々が多いので、とってもやりがいを感じています。