メンバーを育てるために大切にしていることが、3つほどありまして。
先日より、杉並区協働推進課から委託されている事業「地域デビュー応援講座」が始まりました。
これから地域で何か活動をしていきたい人達が参加し、活動に必要な技術や知識を身につけたり、抱いている不安を解消したりした上で、地域に飛び込んでいきます。
5月〜7月にまたがる全5回の講座。
今回、僕は、昨年度からの新メンバーで理事の山本晃史(あっくん)に、講座のゴールから各回のプログラム設計・運営の全てを任せています。
任せると言えば、昨年度からは杉並区ワールドカフェ・サロン“100とも”のファシリテーターは、メンバーに完全に任せてきました。
今年は更に、メンバーの個の色を出すために、音楽や小物、スライドデザインといった空間づくりからテーマの設定まで、全てファシリテーターを担当するメンバーに任せています。
「任せる」
メンバーが、自分で考えて、選択し、その結果を自身で感じてもらう。
理想を描き、現場を知り、自分を知る。
緊張、不安、興奮、失望、落胆、孤独、幸福、後悔、安心、感動…様々な感情が渦巻く。
そんな、経験と感情と知識の積み重ねが、人としての厚みとなり、それを成長と呼びます。
メンバーの育成・成長は、目的の実現のための長期戦略をもつ団体にとっては欠かせないもの。そう考えると、「任せる」という選択は、メンバーの育成のためには避けては通れないプロセスなのです。
しかし…これは、とてつもなく入念な準備がいる作業でもあります。
一歩間違えると、メンバーのモチベーションを根幹からへし折ってしまうかもしれません。一人一人の成長段階に合わせて、任せる範囲や規模・任せ方・きっかけを変えていかなくてはなりません。
幸いなことにISPは、メイン事業である“100とも”は、代表の僕がいなくとも開催できるところまできましたし、前述のように収益事業の一部をも任せられるようにまでなりました。
ここまでくるのに3年。
僕が、メンバーに何かを任せるときに大切にしていることを、忘備録も兼ねて大きく3段階に分けて書いておこうと思いました。
第一段階:モチベーションを育てる〜リーダーが身近でカッコいい背中を見せること〜
いや、実際にカッコいいと思っているかは分かりませんし、聴くのは怖いので聴きません(笑)けれど、カッコよくあろうとはしているつもりです。
リーダーが、「こう考え、こうやると、こうなる」という成功の現物を、間近で見せること。時には失敗して、悔しそうにしていること。
それでも、リーダーが、楽しそうで、カッコよく見えること。
リーダー自身やその周りに、ワクワクしている雰囲気が漂っていこと。
だから、それを真似したくなると思うんです。
「自分もやってみたい!」
まずは、その感覚を引き出す必要があります。
これが一番重要。
カッコつけること…これは、リーダーが自分の活動や団体にメンバーを誘う上での責任というかマナー…と言っても過言ではありません(と、勝手に思ってます)
第二段階:構成力を育てる〜ゴールを共有し、小さな実践を重ねること〜
メンバーには「動くときには、必ず目的を意識すること」を、徹底して伝えています。
会場装飾なら、「参加者が写真を撮りたくなるくらい可愛くお願い!」
参加者への接客対応なら、「ディズニーランドを超えよう!」
…などなど、分かりやすい言葉でゴールを表現して投げかけ、そこにメンバーの想像力をミックスし、実践してもらいます。
辿り着く先を決めてしまえば、あとはどういう道を進んでも構いません。
そこに個性が生まれるからです。
大切なのは、常にゴールを意識すること。そして、自分でその道を決めたという実感を持たせること。
それが今の自分の基準となり、成長を積み重ねていく土台となります。
イベントやワークショップの制作を任せる時は、ゴール自体も自分で考えてもらいます。
そして、ゴールとコンテンツの整合性をきっちりと説明してもらいます。
なんとなくで決めさせない。
なんとなくで決めると、成功・失敗の実感が薄れます。
「こう考えて、こうしたら、こうなった」という、思考→実践→成果を、きちんと自分の経験として積み重ねていくことが、成長につながります。
そして重要なのが、いきなり大きなことを任せないこと。
スモールステップで小さな成功を重ねていきます。
100ともなら、いきなりファシリテーターを実践するのではなく、司会という役割を通じて、人前に立ったときの自分の感覚・自分の言動が場に与える影響を実感してもらい、そこでの経験を活かしてファシリテーターとして場を担当してもらいます。
第三段階:実践力を育てる〜無茶ぶりをすること〜
もう出来るなと思ったら、すかさず無茶ぶりをします。
「やってみる?」「できるっしょ?」と、さらっと、笑顔で(笑)
「出来ない」と「やったことない」を混同している人を見かけるのですが、
「出来ない」と言っていいのは、何十回も挑戦して、その都度考えて、調整して、それでも出来なかったときだけ。
「やったことない」ことは、出来なくて当たり前。
だから、「出来ません」という悲痛な叫びは大抵無視します。
だって、僕から見たら、絶対出来ると思っているんだもの。
じゃあ「出来る」とは、どういうことでしょう?
僕にとって、それは、「それをすることで“何かしら”得られる器が準備されている」状態のことだと思っています。
目の前の成功・失敗というのは、組織運営にとってはさほど問題ではありません。
長い目で見た時に、この経験がしっかりと蓄積される土台が出来ていて、その経験が必ずどこかで生きてくると判断出来たのなら、それは「出来る」こととして、任せちゃいます。
「よしっ、やろう!やってみよう!」と笑顔で肩を叩くと、みんな文句を言えません。何ででしょうねぇ。ふふふ。
そして、何より重要なのは、任せ切ること。“切る”が大切です。
一旦、メンバーに任せると決め、事前にしっかりと準備したのなら、
実践でしか得られないものを余さず吸収してもらうために、手を出さないのが「任せる」の流儀です。(もし手を出すとしたら、それがお客様の不利益につながるときだけ)
手を出す度に、「自分でやっている」という感覚…経験の純度が落ちてしまうからです。
メンバーのチャレンジの後、一番聴けて嬉しい感想は「悔しい」です。
これまでやったことがないことに挑戦したにも関わらず、
そこで勇気を振り絞った自分を讃えるのではなく、
勝手に頭の中で反省会を開いて、
もう次を意識している!!
…こんなに頼もしいメンバーはいません。
僕自身、任せるタイミングがあっていたんだと、胸を撫で下ろします。
一番よろしくない感想は「もうやりたくない」です。
これは、リーダー大反省です。まだ、任せるタイミングではなかったということ。傷付けてしまった自信を、寄り添いながら丁寧に修復していかなくてはなりません。
今までに、2回かなぁ。。
あれは、申し訳なかった。。
…そう。言うてもまだ僕自身も、ひよこちゃんなんです。
ISPも、もうメンバーはごそっと入れ替わっています。
もし、僕がもっと上手に組織を運営していて、もっと楽しくて、メンバーに成長している実感を与えられていたのなら、もっとメンバーとして続けてもらえていたのではないか…と、ちょっと自分の傷口をえぐってしまうときもあります。
忘れてはいけないのは、リーダーもまだまだ未熟であるということ。
団体の外の世界で、たっくさんのカッコいい大人の背中から学びながら、
メンバーと丁寧に向き合いながら、
一緒に実践を通じて、
一緒に育っていきたいものです。