「自由に」「自然に」の罠 ー自由な会議は望むものではなく、創るものー

イメージしてみて下さい。

集会室に参加者が集まり、席に着きました。
いよいよ会議が始まります。

開口一番、司会者からの一言。

「今日は議題について、自由に思ったことをお話し下さい」
「かしこまらないで自然な感じでいきましょう」

シーン…と静まり返る会場。隣の人と顔を見合わせながら躊躇している参加者がちらほら。

困った司会者が、個人に話を振ります。

「どうぞ、○○さんの好きなようにおっしゃっていただいていいんですよ。何かありませんか?」

・・・・・

たまに出くわす「あるあるな会議」の場のイメージです。

おそらく場の主催者は、参加者の主体性を尊重したい・本音を引き出したいという意図で、「自由に」「自然な」という言葉を選択されるのだと思います。

しかし、これらの言葉はタイミングを誤ると、全く逆の効果を引き起こしてしまいます。

会議やワークショップ型のイベントなど、人が集まる場では、参加者の頭の中には参加する前から「分からない」ことがたくさん浮かんでいます。

・何を話せばいいんだろう?
・何時までかかるんだろう?
・他の参加者はどんな人だろう?どんな気持ちでいるんだろう?
・また前回と同じ感じかなぁ…?

「分からない」という状態は、「不安」という感情に直結し、出来る限り失敗をしない選択をするようになります。会場に入るとマイクから一番遠い後ろの席に座るというのも、「当てられない=失敗しない」という不安からの選択でしょう。

そんな「分からない」がうごめく開会直後、「自由に」「自然に」「好きな」という曖昧さを伴う言葉は、更に参加者の「?」を増やします。

・自由って、どこまで?
・あなたの言う自然な感じって?
・好きなようにやって、他のみんなにどう思われるだろう?

結果、参加者はいずれかの行動を取るでしょう。

他の誰かが答えてくれるのか、はたまたこの現状を鑑みて司会者が方針を転換することを信じて「黙る」
他の人に「合わせる」「譲る」
声の大きな人・慣れている人に「便乗する」

「自由」「自然」という、参加者のあるがままを引き出したいと望んで発した言葉は、結果として、当たりざわりのないつまらない時間に変えてしまいかねません。

では、そうならないように、「自由な」場をつくるためにはどうすればよいか。
具体的な場面ごとに例を挙げてみます。

例1 開会の時間
◾︎5W1Hは最初に丁寧に共有する
◾︎しっかりと準備し、5分以内に終わらせる

・この会議が終わったときにどのような状態になっていることを目指すのか
・どのようなスケジュールで進めていくのか
など、前提条件はしっかりと参加者と共有しましょう。目指すべきゴールがはっきりしていることで、参加者もそこに貢献するために動くことができます。

また、開会の印象が会全体のイメージをつくります。どんな会議にしたいのかをイメージし、それに合わせた声のトーンや表情など、司会者は準備が必要です。だらだら話すのもマイナスイメージ。何を話すかと同じくらい、何は話さなくていいかを考え、シンプルにまとめましょう。

例2 自己紹介の時間
◾︎話す項目はこちらで用意する
◾︎Closed→Which→Openな質問を織り交ぜる

『お名前・お住まい』など、考えないで発せられる質問、
『好きな食べもの(寿司のネタは鉄板)』など、ちょっと考えて選ぶ質問、
そして、『今の素直な気持ち』や『今日の意気込み』など、自由に考えられる質問、
それぞれを用意することをオススメします。Closedな質問は、知らない人の前で声を発すること自体に慣れるという効果もあります。

「型にはめたくない・自由に喋ってほしい」という声も聴くのですが、それを願っているのは主催者であって、むしろ最初は型通りの方が安心して喋れると考えるのが参加者です。型にはまりたくない参加者は、いくら型が用意されていても、それを「上手く」崩すので心配しなくて大丈夫。

例3 グループ討議の時間
◾︎似た考えの人達を集めてグループをつくる
◾︎想いの共有から意見・考えの共有へ

例えば、賛成・反対など、意見の方向性がいくつかに分かれる議題を扱う場合は、初めに同じ意見を持つもの同士にグループ分けをしてしまうのも手です。同じ考え方の人が集まっているという安心感が、参加者の自由な発言を促します。その後、別の考えを持つ人達と話し合う機会があっても、「うちのグループでは…」という切り口で、「個人の考え」ではなく「グループの考え」として発信できるので、ハードルが下がります。

また、話し合う内容も「どうしてそう思ったのか」という想いの共有から、「どうしたらいいか」という意見・考えの共有へと進めることで、周りの人達の意見の根拠が分かるので、受け入れやすくなります

自由な場は、

参加者が何を不安に感じているのかを察し、それをできる限り取り除く。
その場の安心・安全を、目に見える形で保障する。

そのようなことを丁寧に積み重ねていくことによって創られていきます。

そして、ファシリテーターは、そんな場づくりをプロとしてお手伝いしています。

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